悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

支えられて整体する

基本的に私は出張では仕事をしないけれど、縁あって今月から、定期的に出向かせていただくようになった患者さんがいる。

昔ながらのつくりのご自宅の仏間に、施術台と回転イス一つを持ち込んで、お仕事させていただいている。

初日は、はじめ雰囲気に慣れず、いつもの調子があがらなかった。

でもそのうち、その部屋が患者さんやそのご家族、親類の皆さんやもちろんご先祖の、あたたかい愛情に満ちていることに気づいた。

みなさんが患者さんと、そして私自身も見守っていただいてるんだなと、すがすがしい想いで施術できた。それは二度目の訪問でも感じられた。

それがそのお宅の、歴史というものなんだろうなと思う。私ひとりが「よくなりますように」「楽になっていただけますように」と願い施術する以上の、あたたかく背中に手を添えるようなものがある、というか。

私は23歳で父をなくしたが、以来どこかで「おとうさんが守っててくれるから、だいじょうぶだあ、そうとう悪いことにはならないだろう」という思いがある。

整体師しているのも、父が背中を押してくれている部分があるのだろう。

結局のところ、私は父を施術したかったのだと思う。揉んでくりょよう、と言われた時に、もっと揉んであげなかった後悔があるのだ。

そのころ尽くしきれなかった幼さと、後悔。

父と同世代の方や、同じ薬を服用されている方が見えると、時折原点に戻るのを感じる。そして常に自分の父を施術するつもりで、気持ちを尽くしたいと願う。そう心掛ける限り、私の手には力があるだろう。という自己肯定感も、ある。

同様に、最近近しい親族を亡くした整体師仲間がいる。きっと彼女も、もっともっと揉んであげたかったと思う。もっともっと楽にさせてあげたかったと思う。

Yちゃん、だいじょうぶだよ。多分あなたも一緒だと思うよ。私たちはきっと、こういう気持ちを忘れずに精進するかぎり、いい整体師に近づいていけると思うよ。見えない力に支えられてね。

きっとやさしく見守られているからね。(はは)