悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

エンド・オブ・ライフ(佐々涼子)

筆者は、看護師である友人から、自分自身が余命わずかながん患者となったこと、最後の共同執筆をしてほしいことを告げられた。
7年間の軌跡をまとめつつ、肉親も含めた様々な人たちの自宅介護を追う。
 
わたしはたぶん、比較的生き死にに接する機会が多い日々を過ごしてきたのだと思う。施設で働いたこともあるし、父も長く病んだ。それに高齢者の多い地区にも住んでいた。でも、そのことと、実際に自分が余命を見据えて生きることとは全然違うんだろうな、と、読みながら考えた。
「体が変わったら自分自身も変わってしまったんですよ」
訪問看護で週に何人も看取るような日々を送ってきた友人Mさんは、診断を受けてからの心情の変化を、こまかに語っている。行動も変わる。そこを丁寧に追っているところが、とても読みごたえがあった。
日々の濃密さも、優先順位も、恐れの変化も。
 
そして、これは自分も実感があることだけれど、亡くなる人は残される人に贈り物をして行く。どんな形にせよ、どんな関係性であっても。私も人がなくなるたびに、いろんなプレゼントをもらってきた。みなさんもきっと、思い当たるだろう。人はバトンを送ってるんだ。
 
この本に限らず、死をテーマにノンフィクションをまとめる機会が多かった著者が、あとがきで述べている。
>私たちはだれも、死について本当にはわからない。もしかしたら、生き死にはただの概念で、人により場合により異なっているのかもしれない。
>ただ一つ確かな事は、一瞬一瞬私たちはここに存在しているし、別の表現をすれば一瞬一瞬死んでいるということになるのだろう。
これってとても納得のいく表現だ。人は生きてきたようにしか死ねないし、時間は伸びたり縮んだりしながら、生も死も内包している。バトンのつなぎ方を考えさせられる本だ。