秋ふかまる
下の娘が、ろうそくの明かりでお風呂に入ろうという。
エコを勧める新聞に、共感したらしい。
ゆらゆら揺れる ろうそくの明かりが、ゆらゆら揺れる水面に映ると、
はかない灯りの残像が、不安定に描かれた。
線香花火のように。たましいのカケラみたいに。
眠気を誘われた娘は「もう出る」
定位置の腕枕でおやすみ。
今日の出来事をうちあけて、上の娘は静かに泣いた。
言葉のなぐさめはきかない。
手や足をくっつけて、体温で会話した。
涙はとまったけど、鼻がつまって寝にくそうなので、
顔を触っていたら、「とおった。さすがだネ」お褒めの言葉を最後に寝息。
窓から漏れる灯りに、月が出たと知る。
キンモクセイの香りが、庭に満ちている。
いつのまにか虫の声もかわった。スズムシの声はもうしない。
子どもは寝かしつけられても、自分ひとりの寝かしつけもできない秋だな。