お岩さんになったこと
自他共に認めるお医者さん嫌いだけど、皮膚科にかかった。
顔の半面に発疹とじくじくが広がって、ぶわーっと腫れてしまったのだ。
理由を知りたい、というのと、仕事柄も大事だから、最低限の治療は受けなさい、という ちちの助言にしたがって、(いやいや)受診することにした。
塗り薬飲み薬を処方されるのは覚悟していたけど、
「ぜひ飲んでいただきたい」と示されたステロイド内服薬が、聞き覚えのあるものだったので ちょっと黙った。
自分の父親が持病の治療のために、ずっと飲み続けていた薬だったから。
ただの個人的な感傷だけど、この薬を飲んでいますと患者さんに言われると、内心どどーっと感情移入してしまうものがある。
父は症状が重くなると、だんだんこの薬の処方が増えていった。「今回は○つに増えた」「今回は○つにしてもらえたよ」と、よく話題に上った。当時の基準の目一杯まで飲んでいた、という。
「この薬が大事なんだ。この薬がとうさんの骨をどんどんだめにしてくんだ。でも、飲まない訳にはいかないだよ」と、小さいころから食卓で言われていたから、いやに印象が深い。
たぶん当時とは、使われ方も違うんだと思うし、よく効く・よく聞く薬ではある。それでも聞くたびに、どきっとしてしまう。
院内処方で一週間分。最初は4錠。段階的に減らす。ご丁寧にも、勝手にやめるなと書いてある。
普段薬と無縁なのが功を奏してか、おかげさまで薬は効いたように思う。強い塗り薬で肌の色はおかしくなったが、肌の色を気にすることができる程度の状態になったことが、そもそもありがたい。
ステロイドを使ったのは何年振りだろう。
患者さんにも、ステロイドの副作用が体に現れる人が何人もいた。あらためて処方された薬について調べ、今後に生かそうと思っている。せっかくだから副作用や回復の具合について、自分の体で理解しなくちゃな。