土のある暮らし
例によって保育園を早引けした娘と、庭に出た。私は庭の整理、娘は泥んこ遊びに精を出していると、二つ向こうに住んでいる女性と、ここしばらくいっしょに住んでいるおばあちゃんが にこにこと遊びに来てくれた。
おばあちゃんは もうちょっと山奥の実家に住んでいたのだが、物忘れがひどくなってきて ひとりにしておけない・・・ということで、とりあえず同居することになったらしい。でも、することがなくて手が寂しいんだそうだ。気がつくと 我が家の玄関先の雑草がきれいに抜かれたりしていて(汗)ありがたいです。
山の家には、畑や広い庭もあるそうだ。ウチみたいに草ぼうぼうにしていると、つい手入れしたくなるらしい。今日も、娘をかまいながら、座り込んで雑草抜きをしてくれた。「水仙の芽が伸びてるに、ここ掘っちゃいかんよ」なんてね。
「こうしてりゃ 余計なこと考えなくていいんだら」と、ご近所さんは笑ってくれた。ありがたいことです。
10年も昔、不動産屋に勤めていた頃にであったおばあちゃんのことを、ときどき思い出す。
そのおばあちゃんは息子の借金のかたに、自宅を取られてしまった。その家を買ったのが、私のところの不動産屋だった。つまり、うちが追い出したって事だ。
おばあちゃんはしばらく行く当てもなく、憔悴しきっていたが、幸運なことに生活保護がおりて、アパートを借りることができた。
そのアパートに、私も行った。世田谷の幹線道路裏の、6畳ひと間で、テレビとこたつのほかには冷蔵庫もなかった。窓際に鉢植えがひとつあって、その同じ植物を花屋で見るたびに、おばあちゃんのことを思い出す。
おばあちゃん、何してるかなと。何もすることないんじゃないか、と。
年賀状のやりとりが2,3年続いて、返事が来なくなった。
当時私もアパート暮らしだったが、年をとったら少しでいい、土のある暮らしをしたいと強く思った。ほんの少しでも、耕せる花壇や畑があったら、人生に張りがあるだろうと思った。
今でも、贅沢をしたいなんて思わないけど、それだけは譲れないなと思っている。(はは)