ジェスチャーからの連想
小学校の学習指導要綱がかわって、5年生から英語の授業が始まったそうだ。先日は、英語に親しむ一環として、ジェスチャーで思いを伝えるゲームをしたらしい。
クラス便りにも、子供たちの 身振り手振りで伝わって面白かったという感想があった。
そうそう、外国語だって日本語だって、大事なのは伝えたいっていう気持ちと、少しの度胸なのだよ。と、母は思う。
それで、思い出した1ことがあった。
貧乏旅行の目的はクライミングだった。岩場のアプローチには車が必要だった。それでパリの南の外れにあるオルリー空港っていうところに、レンタカーを取りに行った。たしかそのほうが安かったんだな。何で一人で取りに行くことになったんだろう?しかも2年以上ペーパードライバーだったくせに、何を考えていたんでしょう(^_^;)
空港のカウンターで鍵を渡された。「○番の駐車場にあるから」って言われて放置されたので、たずねてみた。
「あのー、パリにはどう行ったらよいでしょう」
係員さんはしばし黙ったが、一緒に外に出てくれた。
「あそこに、パリって書いてあるでしょう?」と、看板を指差す。高速道路の表示だ。
「はい」
「その向こうにも、パリって書いてあるでしょう?」
「はい」
「パリ、パリ、パリ・・・・allez!」
レッツゴー!って言われても、左ハンドルだし高速道路だし、しかも霧だし(涙)エンジンかけてみたらガソリン入れなくちゃだし!
まるでお約束のように、ウインカーとワイパーを間違えながら出発しました。
環状線をよけいに一周した後で、なんとかガソリンスタンドにたどりついたけど、セルフでワケが分からない。「はじめてなもんで、すみません」みたいなことを(ジェスチャーで)言ったら、店員さんが笑って「ボクが日本に行ったら、君が入れてくれよ」みたいなことを(ジェスチャーで 笑)言ったのを覚えている。
「ガソリン満タンでお願いします」ってのは、会話集のページを見せたっけな。
それからこんなこともあった。
ドイツの田舎道で、脱輪してしまった。
とても友人と2人じゃ持ち上がらなくって、近くの民家までとぼとぼ歩いた。
大男が出てきてびっくりした顔するから、「グーテンターク!(こんにちは)」と言ってみたが、あとが続かない。
そこで、「ツヴァイ フンドレッド ミーター(200m)、アウトー(車)、・・・コロン!」とジェスチャーしてみた。
そしたら、あ~あ~分かった、と消えた。
馬鹿でかいトラクターと、鎖をジャラジャラ持ってきて、引き上げてくれたっけ。
国籍が違ってもクライマー同士だと、伝え合いたい意思があるから結構通じた。
岩場の情報とか、あのルートのあの部分は、お前どういう体勢で登るんだ?とか。
「ここでこうしてクリップするじゃん」
「ヤーヤー」
「で、ライトハンド、ベリースモールホールドでぐーっと耐えといて」
「オー、グレイト!」
「で、ライトフットあげといて~の、ばーんって飛んで、こうね」「アイシー、アイシー。メルシーボクー」なんてね。いいかげんだわ。
落ちちゃった時のちっくしょう!なんて言葉は、各国にあるから面白かったです。
友人なんて「くそー!」って叫んでから、冷静にアメリカ人に向かって
「”くそ” is “shit”!」なんて解説してたっけ。
まる一日かかるようなロングルートでも、技術は共通だから、大事な声かけ(安全確保とれたよ!とか、登るよ!とか)の言葉だけ確認して、命預けあうこともできた。
そうやってコミュニケーションしている先輩をみて、ああそうかあれでいいんだと気づいたときに、私も度胸がついたように思う。
だから、いつか、格好悪くジェスチャーや日本語を交えながら、でも楽しくコミュニケーションする姿を、子供たちに見せたいね~と思います。