一期一会
押し車によりかかるようにして、道を歩いていくその人の横を、
車で通りすぎた。
ずいぶん久しぶりに家を出たんだろうと思いながら。
30分ぐらいして、河原に降りていく坂道に 押し車が置いてあるのをみつけて、
ちょっと気になったので、降りて行ってみた。
おばあちゃんはよもぎの葉をむしっていた。
「よもぎの餅が喰いたくなってな!」
少し時期が遅いんじゃないかと思いながら、一緒に手伝った。
ウチの子どもの話になったので、
「子どもが大きくなっちゃうは、つまらんなあ」と私が笑うと、
「年取ってばあさんになるのも、つまらんぜえ!?」と おばあちゃんも笑った。
毎日遊びに来ていたという、近所の同世代の方が亡くなって、
「(お悔みに)行かなきゃ悪いと思うだけど、行きえーない」と話した。
おばあちゃん達が、そういうときの心情は、
40代の私には図りかねて、いつも黙ってしまう。
私が、クワの実を集めてジャムにする。ヨーグルトにかけると美味いというと、
「ヨーグルトのだしにすれば、美味いらな!
でも、何けもできないらな(大した量ができないだろう)!」と満面の笑みだった。
だし、というのが面白くて、私も笑った。
大丈夫そうだったから、送らずに明る挨拶をしてく別れた。
家の前では、息子さんが待っていたようだった。