悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

あきない世傳 金と銀

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義母に勧められて読み始め、やはりの一気5巻読了・・・台所ほうりっぱなし(*_*;

高田郁さんは、「みをつくし料理帖」を友人に勧められて読んで以来、何冊もお世話になっています。

運命を恨まず、置かれた場所でまっすぐに前を向く女性の生き方を

魅力的に描いてくださる作家さんだと思っています。

女は文字さえ学ぶのも不要とされていた江戸の時代に、

主人公の少女は水仕事の合間、そっと板張りに水で字をかいて、

兄に教わった二文字を忘れまいとします。

七夕の笹飾りに、「知恵」と書くためです。

大好きな兄と父が急逝し、神も仏も信じないと決めた娘は、

口減らしのために商家に奉公に出されたことで、眠っていた商才を育てていきます。

好きな場面を二つ、抜粋しておきます

「ご寮さん、まずはしっかりと知識を身につけなはれ」

「知識を?」

鸚鵡返しする娘に、そう、知識だす、と治兵衛は応える。

「知恵は、何もないところからは生まれしまへん。知識、いう蓄えがあってこそ、絞り出せるんが知恵だすのや。商いの知恵だけやない、生き抜くためのどんな知恵も、そないして生まれる、と私は思うてます。せやさかい、盛大に知識を見につけなはれ」

 番頭の言葉ひとつ、ひとつを胸に刻んで、幸は大きくうなずいた。

「ご寮さん、今日はお目にかかれて嬉しおました」

文次郎は傘を取って、深く頭をさげる。幸と賢吉も同じく丁寧にお辞儀を返した。

左右に分かれてから、文次郎は、ご寮さん、と幸を呼び、

「図太うに生きなはれや。図太うにな」

と、大きく笠を振ってみせた。

この十一年、図太く生きてきた。

次の十一年もきっと図太く生き、笑って勝ちに行く。

綿買いの後姿を目で追って、幸は胸の内で誓った。

物語と幸の人生はまだ続きます。ああ6巻が待ち遠しい。