大根の種を食す
80代のHさんは、何度も持病を再発させているけれど、いつもひょうひょうとしている。「俺は天国なんか暇そうだから行きたくない。地獄に行きたい」「Hさんなんか地獄の入り口で、閻魔さまに帰れって出禁にされるよ」なんて軽口をたたくのが常だ。
Hさんとは食の趣味も合って(?)、いかに変てこりんなものを食べたか自慢しあうのも楽しみだ。明日葉はどうだ、さるなしは喰ったことがあるか、浜納豆って知ってるか・・・等々
先日は「カスマグサを喰った」というので、
「そんなもん喰ってどうするんっすか。それに、カスマグサって、ヒトの口からきいたの初めてですよ」と大笑いした。カスマグサとは、カラスノエンドウとスズメノエンドウの頭文字をとった植物の名前である。つまり、はっきり「雑草」。
「案外イケたよ」なんてうそぶいているので、
「じゃあ、クズの芽は食べたことありますか?あの、土手とかでしょうもないやつ」と尋ねてみたら目を剥いてくれたので、いい気味だった(^_-)-☆
そんなHさんに一本取られた!と悔しかったのは、
嬉しそうに「大根の種」をプレゼントされた時のことだ。
まだ若い、さやに入ってる状態のもの。
そのまんま炒めで大丈夫だよ、と言われたけど、
全然信用していなかったので(;^ω^)茹でたら、これが美味で、美味で。
種には、一句添えられていた。
大根の 実とタラを喰えば 春の涯(はて)
春の終わりになると大根も実をつけ、タラの芽もとれなくなって、食べられなくなった。
もう梅雨だ。春は終り。
Hさんとは、山間地で栽培できるものを見つけて一山当てようと話している。元気で長生きしてくりょうよ。