役に立ててよかったお話
人間、経験して五感に沁みついていることには同情心が湧くものだ。私の場合、たとえば頭痛がつらいと言われると、真剣に同情する。それから、投薬の聞き取りをしていて、父が飲んでいた免疫抑制剤の名をきくと、ちょっと心が震えてしまう。
今日は、近所に住んでいる年上の知人から電話がかかってきた。出かける矢先だったのだが、「ダニに喰われちゃったのよう」と言われて、
しかたがない。つらかろうから寄りましょう
という気にならざるを得なかった…。
山あいで畑仕事をする人に、ダニはかなり深刻な悩みだ。こんな話、マチに住む人に話すとドン引きされちゃうけれど、ダニは噛みついたが最後、手でつまんだぐらいじゃとれないんである。そして喰われた痒みは耐え難い。加えてちっちゃいから、老眼にはなかなかつらい。ピンセット構えても、なかなかうまくいかないんである。
かくして、知人はズボンをめくりあげ、私はメガネを額の上にずらして、格闘するのであった。
そんなこんなも、きっと人生の持ち回りです。役に立ててよかったわー。