悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

6Bの鉛筆で書く 五味太郎

久しぶりに自由できもちのよいエッセイを読んだ。

五味さんの絵本には、自分が子供の頃出合ったような気もするし、育児の時期にずいぶんお世話になったような気もする。ひょうひょうと好きなものを好きなように描いているようでいて、でも自己満足感が匂ってこないところに魅力をおぼえていた。今回の本も同様。オリジナルな視点から、小難しいものを一切抜きにして語った文章に、各地で惹かれたモノを収めた白黒写真が添えられている。

 

一つだけ覚書。「身体」というタイトルのもので、自分の体をレンタカーにたとえて、軽妙な一節を書いている。決してマイカーでもなく、じゃあ誰に借りてるんだとか深刻になることもなく、疑問を呈しつつも答えもあてどなく、でも肯定感に満ちている。

たぶん五味さんの魅力は、人間的な余裕とか安定感から発しているように思う。なんというか、眉根にしわが寄ってないんだよね。以前インタビューで死生観を短く語ったものがあって、たしか、死ぬことすら初めてなわけだから、そこを楽しみにしていくという考えを示していたっけ。

今回五味さんが1945年8月20日生まれと知って、さらに近しいものを感じてます。

あとがきにこうあった。「小さな文章を書いてみる愉しみというやつは、もしかしたら散歩ににているのかもしれない」私も彼に倣って、脳内散歩を楽しもうと思う。