悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

人はどう死ぬのか(久坂部羊)

こどものころは、大人になったらだんだんと慣れていくのかなと思っていた。
父のなくなるときに立ち会うことができなくて、悲しかった。でも、どこかホッとした思いもあった。「あの世」につながりができたから。ちょっとだけ恐怖がなくなったからだ。だから、やみくもに恐れるよりも知ること、感じることって大事だ。
いま50代になって、若いころに想像していた以上に、慣れることはないもんだなと思う。
それでも折にふれて、遺品整理とか、おくりびと関連の本に手が伸びるようになってきている。多分一人暮らしになった影響もあるのだろう。
 
死について、新しい視座を与えてくれる本だった。医師でもあり小説家でもある著者が、たくさんの患者さんの水際に触れてきた経験や、率直に自分自身の死生観を語っている。日本ではカーテンの向こうに追いやられて、「忌む」とされている世界を、私はもっと知っておきたい。そうでないと、私自身はにっこり笑って老いていけないと思っている。