悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

すぐ死ぬんだから(内館牧子)

コミュニティで何人かがすすめておられた本。軽い読書のつもりで読み始めたけれど得るものが多かった。主人公が 78歳の小説がどうしてこんなに面白いかといえば、こうして年を重ねていきたいと、心から思える人間像だからだろう。
 
ネタバレになってしまうのであらすじは書かないが、主人公ハナは気働きはあるし、酒屋の女将だけあってコミュニケーション能力も抜群だ。そして人生のある地点から、自らの外見を磨くことも忘れない。おしどり夫婦で守ってきた店を息子達に譲り、悠々自適に見える。
そんな彼女に思いがけなく降りかかる「災厄」。しかしハナはめげない、腐らない、自己憐憫に浸らない。自分にも他人にも、心の中で軽妙なツッコミを入れるユーモアのセンスが抜群だ。先日の読書記録で触れたが、「逆に、楽しい」の発想がはんぱない。
全ての出来事を消化して、昇華させて、
老いの境地をフットワーク軽く、
そして周囲ともチームワークを強めつつ、まっすぐ前を向いて進んでいく。その姿に私は、希望と共感をおぼえました。
彼女が胡桃せんべいを食べながら、自室の窓から外を眺める箇所で、私は長いこと涙が止まりませんでした。