悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

天守物語(泉鏡花)

このGW中に、「静岡県舞台芸術センター(SPAC)」による公演『天守物語』が、駿府城公園 の特設会場であった。

1996年初演。日本国内だけでなく、インド、パキスタン、中国、エジプト、韓国、アメリカ、フランス、台湾など国内外30都市で上演された。SPACの芸術総監督・宮城聰の代表作だ。

千秋楽から2日経ってもまだ余韻が続いていて、原作を読んでみた。姫路白鷺城の天守閣が舞台で、「人ならざるもの」天守夫人・富姫と、若き侍の姫川図書之助が出会い、心ひかれあう物語だ。

原作に触れると、舞台で省かれた部分と、逆に印象的に描かれた部分が浮かび上がる。より人間的なユーモアや、生身の女に近い部分を表現したかったのかなと感じた。「見ておいで。それは姫路の、富だもの。」というきっぷのよさ。ばあ、とおどける姿。あの人が欲しいともだえる姿。「千歳百歳にただ一度、たった一度の恋だのに。」というときの切なさ。富姫が異形のものとなった経緯を知ると、その哀しさがより胸にしみた。

演劇は、今、ここを共有して、そこでしか立ち昇らない何かを感じる魅力がたまらな。い。今年も素晴らしかったです。