悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

風神雷神 Juppiter,Aeolus(原田マハ)

原田マハ氏の描くアート×歴史×フィクションの世界には、知らない世界を活き活きとした筆致で垣間見せてくれるおもしろさがある。
もしも狩野派の熟練絵師と、当時まだこわっぱだったはずの俵屋宗達が出会っていたとしたら…?
そしてその二人が、絵師として渡り合いながら一枚の「洛中洛外図屏風」を、3か月かけて仕上げるとしたら…?
その依頼者が天下人・織田信長だとしたら、そのお目通りやいかに・・・?
3年かけてローマを目指したという天正使節団の船旅の描写でも、まるで甲板の日差しや船底の蒸し暑さまで伝わってくるような文章だった。今回も耽溺しました。
 
今年の五月、建仁寺で「風神雷神図屏風」を観た。本物は京都博物館に収められているから、もちろんレプリカだけど。俵屋宗達の絵には署名がないものが多くて、だからこそこの傑作も、明治期に海外に流出することなく国内に残ったとか。歴史はときに皮一枚でドラマティックに転換して、良いとか悪いとか善悪とか判断できないものなんだろうな、と思う。