悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

さよなら旅行かばん

昨年末の大掃除で、ずっと使わなかった旅行かばんを ついに処分することにしました。

このかばん、正確に言えば、一度も本来の用途で使ったことはないし、しかも もともとは拾い物です。しかし、18歳で親元を離れて以来ずっと、なぜか手元を離れなかったのでした。

高校を卒業して、一旦就職した私は、その半年後 唐突に(人から見れば、ですが)会社をやめました。そして、つてを頼って予備校生の寮にもぐりこみ、先の見えない浪人生活をはじめました。

そんな経緯だったので、親からも周囲からも「どうするんだ?」と視線は厳しかったし、

まあその翌年に合格しなければ、山小屋にこもって働こう、と思いつめていました(若いな~)。

そんな生活をしているとき、原宿から代々木駅まで歩く途中で(貧乏生活で、予備校帰りの電車賃を浮かすためだった)、この旅行かばんと出合いました。

当時としても古びた 大きなかばんで、小さい頃に少女マンガで見かけたようなデザインでした。麦藁帽子のおんなのこが下げているような。開けてみると中は布張りで、思ったよりもきれいでした。

おそらくは大きすぎて使い勝手が悪かったのでしょう。実用性という点ではマイナスだし。

家出娘に見えないかな、などと思いつつ、そのまま抱えて、中央線に乗りました。

今思えば、それは 社会人生活と浪人生活の閉塞感から脱したいという、気持ちの表れだったのかもしれません。それと、大学での自由な生活への 漠然とした憧れ。

そのかばんにいろんなものを詰めて、どこへでもいけるような気がしました。

結果的には、大学に入って以降 旅には背負い型のザック一辺倒でした。

そしてその旅行かばんは、生活雑貨のモノ入れとして ずっと部屋で留守番でした。

やがて結婚し、子どものおもちゃ入れにお下げ渡しとなりました。そしてモノが増えるに連れて、庭に追いやられました。しばらくは砂遊びセットが入っていましたが、ついにささくれが目立ち・・・

「そろそろ あれ、いいかなあ」

年明け早々の不燃ごみ回収で、引き取られていきました。

あらためてこのかばんとであった 20年近く昔の日々を思い返していたら

その年に自分へのクリスマスプレゼントにした ビートルズの「ラバー・ソウル」を思い出しました。

村上春樹さんの「ノルウェイの森」が ベストセラーになっていた年でした。

一度ぐらい、外に連れて行ってあげればよかったな。ありがとう旅行かばん。(はは)