悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

とべカブトムシ

去年の11月から育てていたカブトムシの幼虫が、成虫になった。

ばんざーい。

育てていた、といっても、小さめの水槽と腐葉土を準備して、乾かさないようにしていたくらいなもの。玄関の場所ふさぎにはなっていたけど、何の手間もなかった・・・ときどき娘が、名前を呼んでたけど。ホントに成虫になって、こっちがびっくりしたわー。

しかもオスだった。立派な角が見え隠れして、若々しく産毛が光っていて、なかなかの男前だった。

水槽から出して、手の甲に乗せたら、けっこうしがみつく力が強くて はがすのに苦労した。

どうしようか?「飼いたい」と娘は即答したけれど、オヤとしては自然に帰したかった。知り合いには、何年も飼い続け、何世代にもわたって交配に成功している人もいる。それはそれで立派な学びになると思うけど、小さなハコしか知らないのだな、と思うとちょっと悲しい。周りに自由な仲間たちがいるだけにね。

「おーきにちゃん(という名前だった、遅ればせながら)もさあ、きっと女の子と会って、結婚したいんじゃないかなあ」などと水を向けると、何とか娘二人とも 納得してくれた。

隣のおばあちゃんが、去年「うちの山で見つけたで」と カブトムシをくれたことがあったので、そこで放すことにした。林に続く茶畑のまんなかで虫かごをあけ、手のひらに乗せた。

はじめのうち、カブトムシはうろうろと頭をもたげて、指をまたいだり手首をさまよったりしていたが、

不意に飛んだ。ブーンと羽音をたてて、重たそうに離陸した。「おおっ」

すっきりとしたうろこ雲の夕空に、カブトムシは時間をかけて、遠くなっていった。あんまりきれいで、ちょっと涙が出そうだった。

「さよーならー。元気でねー」と、3人で声を張り上げた。

カブトムシがしがみついていた手の甲は、ところどころ血がにじんでいた。(はは)