悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

守られて育つ

10月のこの時期、ははの実家ではお祭りがある。そろいのはっぴ姿で山車をひき、かけ声とともに左右に引き回す、勇壮な祭りである。

私は父譲りの祭り好きなので、予定さえ合えば出向いている。今住んでいる地域にはないつながりを、娘たちに感じてほしい、という気持ちもある。

小学生のころは、この祭りが楽しみで楽しみで、めいっぱい楽しんで山車を引いた。大声をあげて練り歩くのは楽しかったし、大人のまねをして竹のおちょこでジュースを飲み飲み、酔っ払ったふりもした。海辺の町なので、歩きながらの酒のつまみに シラスもあって、手づかみで大口をあけるのも嬉しかった。

そういう記憶に比べると、今の子供たちは静かに引くなあ、と、内心物足りなくも感じていた。子ども会の活動も以前とは違うんだろうけど、それにしても、大人がもっとひっぱってあげればいいのに。と、ヨソものながら思っていた。

しかし、最後の晩のことである。子供の参加残り時間が30分となったとき、進行の責任係をしていたかつての同級生が、「よおーし、ここからは子供らだけでひくぞお。大人は回りを守って。自分の子、しっかり見てくりょよう」と声をかけて、場所をしきりなおした。えー自分たちだけで?と俄然興奮する子供たち。大太鼓・小太鼓、笛の音に合わせて、それまでの様子とは打って変わって、大声をあげだした。

お祭りは、事故と紙一重なところもある。酔っ払って正体をなくしてる人も多いし、夜は目がとどきにくい。大きな山車の車輪に巻き込まれたらひとたまりもない。大勢で綱を引いて、足をとられたら 子供なんてすぐに転んでしまう。

私も掛け声をかけながら、娘たちに気を遣いつつ練り歩いた。振り返ったら、子供たちが綱をひく周りを、大人たちのちょうちんが上下に揺れながら、取り囲んでいた。主役の子供たちを盛り立てて、「オラしっかり声出せよ~!」と自分たちも楽しみながら、でもしっかりと、子供たちは守られていた。小さい子供が押されて転べば、数人の手がのびて、急いで抱き起こした。

ああ私が子供のころも、こうだったんだな、と、一気に理解したように感じた。子供のころは、自分たちのことばっかり考えていたし、ちょろちょろ走り回っては、いっちょまえに楽しんでいた。背伸びしたこともした。でもきっと大人たちは、そんな私たち子供を、陰に日向に守ってくれていたんだろう。そして祭りが繋がっていくことを、誇りに感じていたんだろう。

ちょうちんのあかりで、大人も子供も輝いていた。うちの娘たちも、昼間仲良くなった子供たちにまじって、喉が痛くなるほど声を張り上げていた。(はは)