悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

十一月の扉

友人から遠慮がちに、「あの本返してもらえる?11月になったら読みたいから」と言われた。まったく記憶から抜け落ちていたので、一瞬頭が白くなった。あーごめんごめん!ひたすら謝って、本棚から何とか探し当てた。

私ってそういう人です。ごめんなさい。

以前は、好きな小説を何度も読み返すなどして楽しんだものだった(村上春樹さんの本は、ほとんど3回以上読んでるかも)。でも整体の勉強を始めて以来、まとまって読書を楽しむということがなくなってしまった。そういう時期に借りて、要するにじっくり楽しめる気分が盛り上がらなくて、そのままになっていたのだ。いや、言い訳じゃないですよ。反省してます。

今もどっちゃり、勉強することとレポートは山積みになっている。それでやっぱり、読まずに「また読みたくなったら貸してね」と返そうと思ったのだが、ふと「これも縁か」とページを繰り始めて、そして一気に読んでしまった。高楼方子さんのaisbn:4101298718十一月の扉 (新潮文庫)。

14歳の主人公が、きっかけを得て2ヶ月間の下宿生活をする、心の軌跡を描いた小説だ。

この抜けるような秋空の日に、この本にであえたことを、とても幸せに感じる。中学2年生の主人公も、家主の上品な老女も、下宿人のキャリアウーマンも、すべての登場人物が、私自身だと感じた。笑ったり、泣いたりしながら、物語の中にのめりこんで一冊を読み込めたのは、じつに久しぶりだった。

間違いなくこの本は、私にとって特別な一冊になる。そしてこの本を大事に読み返している友人を、これまで以上にもっと身近に感じるし、もっと好きになった。

何というか、ここに至るまでのすべての道が、自分にとっての必然だったな、というのが、私の第一の感想です。しかも、肯定的にそう受け入れられたっていうこと。

私も11月には、迷わず扉を開こう。(はは)