悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

箸を買った

もう10年以上も大昔の話だが、営業のアルバイトでいい成績をあげて、ごほうびに商品券をもらった。1万円だったか2万円だったか。それも、普段まったく足を運ばないデパートでしか使えないものだった。

僥倖のようにいただいたものだから、このさい、すごく贅沢で普段買わないようなものを選ぼうねと話しながらデパートに行った。ツレは現在のちち、もちろんそのころはちちではなかったけれど。

あれこれと迷ったが、そろいの箸を選んだ。何千円っていう値段はあまり見ないようにした。そのころ「新婚当時から象牙の夫婦箸を使い込んでいる」という話を読んで、あこがれたんだったか。それと、たしかいくらか足して、ちちの仕事用のブリーフケースを買ったのだと思う。きれいさっぱり商品券を使えて気分が良かった。

その箸はさすがにモノがよくて、ずいぶん長い間大事にした。海外に行くときにも持っていって、同行の友人が不用意に菜ばしとして使ったときには、友人がびっくりするくらい怒った。

だから、ちちが片方なくしたときにはそれなりにショックだった。だって結婚指輪より長いつきあいだったもんな。でもそのうち、もう片方もなくなってしまった。なくしたのは私のほうだったかもしれない。引き出しや冷蔵庫の下でも、引っ掻き回して探したらあるのかもしれないが。

それ以来、適当な箸を何代か経て、今日まで来た。

今日、久しぶりに一人でオマチに行った。知人へのプレゼントを探しながら雑貨屋をぶらぶらしていたら、箸と目が合った。そして普段用に、二膳いただいた。

あのときに買ったお箸よりもずいぶん格下だけれど、うちにしては上等なおはし。特に誕生日でも記念日でもお正月でも?ないけど、何気なく気持ちははずんだ。特に何をいうわけでもないし、深いメッセージがあるわけでもない。目があったから買ってきただけなんだけどね。「お箸買ってきたよ」とちちに見せた。

今度はもっと、長く使えるといいなと思う。(はは)