げたの上の神様
足ごしらえの話をしていました。ウチの娘が履いていた「ミサトっ子ぞうり」が、昔の「ふじくら」というぞうりに似ていたからです。そうそう、畳表で裏は滑らないようになっていたなあと、おばあちゃん達と話が弾みました。
「ふじくら」は上等の草履で、90代の方から、結婚式で履いたと聞いたことがありました。
ふっと土間に降りたお一人が、お嫁入りのときの下駄を見せて下さいました。
結納のとき贈られたそうです。鼻緒はビロウドのようで、歯の部分に鶴亀が彫り込まれています。
ずいぶん歯が減っていましたが、履いたのは一度きり。実家からこの家まで、4キロの山道を、歩いてお嫁に来たそうです。
「やがて60年」と、もう一人が遠い目でつぶやきました。
小学5年生の教科書に、「わらぐつの中の神様」というお話が載っています。小さいころに音読したっけなあ。
「やだあ、わらぐつなんて、みったぐない」
の、一言を、懐かしく思い出す方も多いでしょう。
この下駄にも、きっと神様がいなさることでしょう。