原発とTPP 落合恵子さん
落合恵子さんが、うかたま 2012年夏号で「原発とTPP」という発言をしています。このところ、ぼつぼつと考えていたことを、ズバッとつなげてくださっているなあと、我が意を得たりの思いでした。ちょっときいてほしいので、長いですが、引用します。
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(福島第一原発の事故について)行く先もない核のゴミを考えれば「事故収束などない」、と言える事故である。以来、作家の大江健三郎さんたちと「さようなら原発1000万人アクション」の呼びかけ人のひとりとして、反・脱原発の活動に取り組んでいる。
・・・前掲の七世代先の子どもたちというメッセージをわたしに手渡してくれたのは、…ネイティブ・アメリカンの女性だった。「わたしたちには、祖父母やそのまた親たちから教えられてきた、生きる上での約束があります。
何かを選択するとき、何かを決定するとき、七世代先の子どもたちを考えよう。たとえ現在、それがいかにも必要で、利益があるように説得されても、それが七世代先の子どもたちの生命と暮らしを脅かすものなら、わたしたちは反対しなければなりません」
わたしたちの「いのち」は、はるか祖先から受け継ぎ、そうしてわたしたちの「いのち」もまた、はるかあとの「いのち」へ受け継がれていくものである。その、「いのち」のつながりこそ、あらゆるモノやコトを選択するときの基本になるべきものだ。
わたしの中では、原発とTPPは同じである。経済優先主義の下、「平成の開国」「乗り遅れるな」などと喧伝されるTPPである。
広島や長崎に原爆があれほどの被害をもたらしたにもかかわらず「原子力の平和利用」の名の下、商業用原発が次々に造られていった。
特に地元の、主に第一次産業に従事するひとたちの反対の声をねじ伏せての、原発建設の過程と、TPPのそれはよく似ている。少なからぬ消費者がそれらを遠くのことと捉えているところも似ている。十分な説明も同意もないまま着々と進めるこの過程もまた。
・・・TPP参加で完全なる自由化となれば、ただでさえ低いこの国の自給率は大幅に低下し、食糧の多くは輸入に依存する事になる。それは七世代先の子どもたちどころか、もっと近い未来の、この社会を崩壊させる。海外からの安価な輸入食品があふれ、はじめのうちこそポストハーベストなどを気にしていた消費者も、やがては安いものに手を伸ばすようになるだろう。そしてそれは農村を、日本の自然そのものを壊し、いのちのリレーを分断していく。
人種差別には無論反対だが、労働力の自由化は失業者をさらに増やし、恐ろしいまでの格差と差別助長につながる。国民皆保険もやがては崩壊し、一握りのものだけが他に犠牲を強いて利益をあげ、その結果は原発同様、多くの生命と人権への侵害となる。