悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

大正シスターズ、温泉へ行くの巻

敬愛する、90歳代のおばあちゃんたち3人組がいます。名付けて大正シスターズ(怒られる~)。

以前から、つる編みなど教えていただいていましたが

毎週、地元の温泉浴場に仕事にいっているので、「行きたいときはいつでも言ってね。ついでだから」と、声をかけていました。

そして先日、ついにシスターズを連れて行く日がやってきたのであります。

約束の時間より、早く来る可能性を考えて、ちらちらと坂の方をうかがっていました(いや、時々ビックリさせられるので)。

すると・・・やはり15分ほど前に、シスター一号の姿が!「おおーっと、早くも第一カーブを曲がってきたアーッ」などと夫に中継していましたが、シスターたちはゆっくりと集合し、ゆっくりと杖を突きながら、やってきたのであります。

「おれら、仲良しだもんなあ」

「おう、あの世へ行く時も一緒に行きたいくらいだわ」どわーっはっはっは、と、朝から全開なのでした。

いつもよりゆっくりと、温泉への道を走っていると、シスター2号がネムの木を見つけました。

「ねぶの花が咲いているわ」「はあ、今の時期か?」

「ねぶの花はなあ、10回咲くと秋が来ると言ってなあ」

「はあ、そんなこというだか.。○○ちゃんは物知りだ」

私が、「10回か、そんなに咲くかあ。

     そんなに咲いた覚えもないが、咲いてみたいもんだなあ」と笑わせると、

「おう。おれは90歳で、咲き乱れているわ!」と返されました。負けた!

帰りはどうしようか。途中で送るからねと話していると、

「いいよ、待ってる人がいるじゃなし、ゆーっくりしていくわ。

 箒で掃かれるまで(おしまいまで)居てもよいだから」

すかさず横から一声。「座敷ぼうきじゃはかれないから、おどろぼうき(竹ぼうき)ではかにゃーしょんないなあ」で、また爆笑。

いつまでたっても、おふろに入る様子がないので見に行くと、

「話すことがいっぱいあるだもの!」と、3人でお茶を飲んでいる。主な話題は、「むかしのこと」だという。

激動の時代を生きてきた世代だ。ジェネレーションギャップを感じずに、あんなこともあったもんだと語り合える、貴重な仲間なのだろう。

私は古い話を聞いてみたくて、いろいろと質問してしまうが、よくこういわれる。

「○○さんには、わからないよ」「うん、わからないなあ」

今回は、「奉公」に出たときの話題だった。「親のこさえた借金の≪かた≫に、13歳で出されただもの」という話は、たしかにどう想像しても、想像を超えるものなのだろう。

「そういう時を通ってきただもの、今は楽な」「おう、こうして過ごせるだもの、感謝しているよ」と、3人は穏やかに笑った。

「他人の家のめしには、骨が入っているもんだ」(*それほど苦労が多い意)という言葉を、覚えた。

結局、シスターズはのんびりとひと風呂あびて、アイスをたべて、箒で掃かれるでもなく座布団を片付けて、一緒に帰りました。「おどろぼうきは、出てこなかったなあ」と、一人がニコニコして耳打ちしてきました。

送らなくてよいというので、自宅の前で3人を降ろすと、

「ああ今日は良い日だった」と、笑って帰っていきました。

また行きましょうね~~。