晴耕雨読、雨上りには野蒜とごぼう
お昼前の時間。用事があって友人の家に行き、玄関先で話していたら
近所のおばあちゃんが、にこにこと頭を下げながら、隣の畑に入っていった。
しばらくして、通りすがらに「いいお天気になりましたね~~」と声をかけると、
畑の隅の一角の、野蒜(のンびる)を、抜いていたのだった。
「勝手に増えるだもんで」とはいうが、その育ち具合からいっても
畑仕事の合間に、少しずつ手をかけて今の季節を待っていたのだろうと、
…これは自分自身が、土をいじるようになって 分かってきたことだ。
ひとしきり、料理法の話に花が咲く。
「ばらまいておいたら、ごぼうもこんなになって。雨上がりならよく抜けるらって思ってさあ」と、
細いごぼうも手にしている。
ごぼうを抜くのは力がいるから、お年寄りは作るのを思い病むのも、ここに来てから知った。
それでも作ってみたいのだ、ばあちゃんは。自分の手で作ったものを、食べたいんだ。
だから、雨上がりに「ちょうどよいわ」と、裏の畑にやってくる。
そして、お昼の防災無線放送を潮に、ひるげの支度に帰っていく。
「さて、これから一仕事、のんびるきれいにしにゃーね」といいながら、
ばあちゃんは坂道を登って行った。