悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

気持ちよーく、土仕事

おばあちゃんは、裏山を30分ほど登ったところにある「かいたく」のはたけに、自分で登っていくことが難しくなった。車で連れて行ってもらえるときに行くのだが、気も遣うし思う通りには行けない。

そろそろワラビが出るころじゃないだろうか。下では咲かない、ドウダンツツジの赤い花も咲くはずだ。ササゲも撒きたいし、何より、草取りがしたいもんだ・・・。

「少し遅い時間になるが、明日行ってみるか?」というと、おばあちゃんは「ほうか?」と目を輝かせた。

さくり、さくりと「またぐわ」で筋をつけるようにうなうと、山の柔らかい土はすぐにほどけた。おばあちゃんが筋をつけ、わたしがササゲを「ちょんぐわ」で撒いていく。

ときどき腰を伸ばしているおばあちゃんに、今度は私がうなうというと、「できるか?」と少々疑わしそうな目。

少し曲がっただの、撒くほうでまっすぐに撒くからよいだのと、笑い合った。

気になっていた、こんにゃくの種イモも土に下した。

比較的強い日が差さない場所を選んで、「これは深めにうなってくりょう」と言われたので、力をこめて撒き床をうなう。

「ああ、気持ちよさそうなあ。おれはいつも、そう思うだよ。

 土をかけてやると、気持ちよさそうなあって。」

土に還った感じかもしれんねえ。おかえり~と、また笑う。

そんなふうに感じながら、土に下されたタネは幸せだ。

そんなふうに感じながら、土に触れる仕事を、おばあちゃんは70年以上してきたんだなあ。

春、種まきの季節である。

早生芋、きゅうり、トマト、かぶ、人参。撒きたいものがたくさんある。気持ちよさそうに育てられるよう、丁寧に畑仕事をしていこうと思う。