悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

自分の感受性くらい 茨木のり子

●自分の感受性くらい

ぱさぱさに乾いてゆく心を

ひとのせいにはするな

みずから水やりを怠っておいて

気難しくなってきたのを

友人のせいにはするな

しなやかさを失ったのはどちらなのか

苛立つのを

近親のせいにはするな

なにもかも下手だったのはわたくし

初心消えかかるのを

暮らしのせいにはするな

そもそもが ひよわな志しにすぎなかった

駄目なことの一切を

時代のせいにはするな

わずかに光る尊厳の放棄

自分の感受性くらい

自分で守れ

ばかものよ

どうしようもなくて、ぱさぱさに心が乾いてしまうときがある。

昨日の夕刊で、作家の木村綾子氏が この詩を引用しているのを見つけた。懐かしいなあ。