Hさんと庭仕事
思うように物事が進まなくて、くさくさした。
そんな時は、誰かのために体を動かして、汗をかくのがいい。
Hさんの家に行くと、今日はどうでも松の芽を取ろうと思い病んでいた、と遠慮がちに言う。
松の芽かき一つにも知恵がある。
「良いかんにいじめても、松は大丈夫だよ」などと教えてくれながら、Hさんは葱のたねなど干し始めた。
隣にはグミの木と、花ゆずの木。足元には野いちごの株。ひとにぎりずつ収穫しては、ジャム用に冷凍してためるのだという。その向こうには鳥がはこんできたビワもある。葉っぱをお茶にしたいなら、いくらでも持って行ってくりょう。
麦もそろそろ「麦秋」を迎えている。ほんとは虫が喰ったものを、肥料に敷いたものだったのに、ちゃんと生えてきて穂をつけて、麦ってすごいもんだな。「いくらも仕事はあるだよ」と、Hさんは嬉しそうに笑った。
松は背が高くなっていたので、脚立に乗らなきゃと思っていただが。ああ助かった。
お駄賃に夏ミカンと、大根たまねぎ、キャベツにじゃがいも。破竹や蕨のあく抜きの知恵まで、教わった。ずいぶんなバイト代になったもんだ。