悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

楽園のカンヴァス(原田マハ)

耽溺、という言葉の似あう、美術リテラシー×ミステリーの物語。アンリ・ルソーの代表作「夢」(ニューヨーク近代美術館所蔵)をモチーフに、史実と創作を熱意たっぷりに描いている。ルソーやピカソの生きた時代と現代の、二重構造になっている。
 
その時代も現代も、
富めるものも底辺に生きるものも、
高い学歴があるキュレーターも 洗濯女も、
世間に認められたものも 孤独にあえぐものも、
老いさらばえた画家も はじめて美術館を訪れた小学生も、
みな平等に、美・愛・情熱を求めるのかもしれません。
 
追及するというよりも、出合ってしまったというように、どうしようもなく魅入られて、「美のような何か」の下僕になってくような感覚って、あるじゃないですか。
私にとってそれは絵画ではないけれど、今まさに前のめりになっている世界があるので、
今の、この時期に読むべき小説だったと感じています。
 
二度通読して、たっぷりとした美と、情熱と、愛情に満たされました。