悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

小さいおうち 中島京子

th0FGE7ACU.jpg おもに昭和初期から戦中の、東京郊外の家庭を舞台にして描かれた物語。女中として「小さいおうち」に住み込むことになったタキさんの回想録という視点で、当時と現代を行き来しながら語られる。この時代の、暗いばかりでもなく、貧しいばかりでもなく、日々を一生懸命に生きた市民の暮らしが生き生きと描かれている。 戦中戦後というと、知りもしないのに、なんだか暗い世相を思い描いているようなところがある。でも、人々が喜怒哀楽し、にぎやかに暮らした、という点においては、なんら現代の私たちと変わらない。 知らなかったなあ、と思う。十把ひとからげにしていたなあ。日々の生活を精一杯楽しもうとし、恋をし、家族を愛していたんだよね。 それぞれが互いをおもんぱかりながらも、答えはない。正解はない。時代の大波に遭いながら、ひと一代が生き切ることの切なさをしみじみと思った。最終章圧巻でした。