言葉をおぼえる
80代のかたに、大川地区でヤボ焼き(野焼き)が行われていたころの話を伺った。いわく、山の「かいこん」がされたのは昭和38,9年ぐらいまでだった。最初にソバを植え、ひえ・あわを植え、最後に小豆を植えた。そのころ以降は杉やヒノキが植えられるようになり、ヤボ焼きは『薄らいだ』とのことだった。
そう聞いたとき、ああ、薄らいだという言葉はこんな風に使うのかとノートに書き留めた。私自身は、「記憶が薄らぐ」という表現ぐらいしか使わないが、ここでは「まれにしか行われなくなる」というような意味合いで使われている。
ところが先日の朝のこと
ごはんのとちゅうで、何の話だったか、下の娘が「・・・でも、『薄らいだ』んだよね」と口にした。
娘が「薄らいだ」、と言った?
と、私はおどろいた。あまり聴く言葉じゃないし、娘はこの言葉を「まれにしか見られなくなった」という意味で使ったからだ。
娘はどこから仕入れたんだろう?たずねても「うーん」と言うばかりだし(当たり前だけど)。
考えてみればマチで仕事をしている私より、娘たちはヤマにいる時間がずっと長い。自然に言葉を身につけていくんだろうな、と頼もしかった出来事でした。