石臼でひく
さて、この小麦をどうするか?
実は昨年も、製粉してくれる場所が見つけられなくて、そのままになっていた。
製粉機を持っている、何人かに心当たりはあるものの、さほどの量でもないし、手間をかけるのも申し訳ないし…と、そのままになっていた。
うん、やってみようと思いついて、近所の方に石臼を借りに行った。
以前、私がダイズをひいてみたいといったら、協力してくれたことがあったから。
「そーんななんもの、手でひくだなんて。大変だからやめておけ」と一蹴されるかとも思ったが、「よいよ、今持っていくか」と貸してくれた。芯棒の調整も教えてくれた。
野菜作りにしろ手仕事にしろ、「自分の手で、やってみなくちゃーわからない」とは、この方によく諭されることだ。だからかえって、やってみろと言われたような気がした。
むしろが良いといわれるが、家にはないのでバスタオルをひき、ビニールシートをセットした。途中、娘たちが入れ替わり、たちかわり、手伝ってくれた。やってみると、急がず、感触を大切に挽いていく感覚がわかってきた。ぐっと下腹に力がこもる。
おわん一杯の穀物をひくのに、どれほど時間がかかることか。
別のおばあちゃんに、こんな話もきいた。
義父が入院中、食べ物を受け付けなくなった。ずっとついて看病していたが、ふと思いついて家に一泊もどり、一晩かけてこうぼうを3合ひいた。それを持って病院に戻ると、義父は「おれは、それを食べたかっただよ」と、笑顔を見せてくれたという。
砂糖入りの、きびをかいたものは、義父の好物だったから。
最後に食べさせてあげられて、よかったと言っていた。
1時間半ほどかけて、小さいペットボトルに2本の小麦粉ができた。まだふるって、ふすまと分けないといけないけどね。