悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

824 月明かりのロンド(ジェーン・ベヤジバ著 蛭川薫訳)

著者の蛭川氏、この本を訳出することが長年の悲願だったときいています。
タイのありふれた路地に住んでいる、年齢も国籍も来歴も違う人々(と、一匹)の物語です。一読していちばん心に沁みたのは、それぞれの人物の物語の根底に流れる静かな愛と、それを描く筆者の愛ある視線、それから訳者蛭川氏の、たくさんの人の生きる力につながるに違いない、という物語にかける愛です。
レビューを入れたくて、またそうでなくても物語の持つ力によって一気読みしましたが、これから人生の先々で、また読み返したいと思うだろうな。
私たちはこの不確かな生を、でもともに生きていくことはできる。そんなことを力強く再認識させてくれる物語でした。おすすめします。