悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

これでおしまい(篠田桃紅)

「103歳になってわかったこと」に続き読んでみました。彼女の生い立ちに沿って、彼女を作り上げてきた背景にも詳しい一冊でした。
 
第一章から「みんな誰だって一人」とあるとおり、彼女が繰り返し語っているのは、人は究極的には独りだということです。大正二年大連で、裕福な家庭に生まれた身としては、縛られるものも多かったはずです。父親は必ず結婚することと遺言で残すほど、封建的な人物だったらしいです。
 
しかし彼女は時代性に反して書で身を立て、初めての個展では本筋から逸脱していると猛批判を浴び、しかし40代で渡米し芸術性を認められるという、波乱万丈な一生を過ごしています。最近覚えたての言葉で言えば「どれだけネガティブケイパビリティが高いのか」と唸ります。
そんな彼女は一生を孤独とあきらめ(明らかに見つめて)、歌人会津八一氏によるという次の句をひいています。
 
『天地(あめつち)に我一人居て立つごとき、この寂しさを君は微笑む』
 
「天と地の間で一人立っている。その孤独感、寂しさを観音様が微笑んで受け止めてくれたように感じたと。
それぞれの人っていうのは、天下に一人しかいない。いくら家族や友人がいようが、その人は一人しかいない。だからその人にしかない生き方をしなくてはいけないんですよ、本当は」
 
前回の感想にも書いた通り、彼女のように自分からあふれるものを芸術として昇華させ、なおかつ言語化もして年老いていくことができればと、目指す老い方を示された思いです。