悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

ムスコ物語(ヤマザキマリ)

ヴィオラ母さん」「国境のない生き方」など、著者の半生記を読んできたので、破天荒で波乱万丈な生き方は織り込み済みです。これを息子の生い立ちを主眼にして、視点を変えて表したもの。
 
ヤマザキマリ氏の別の著書(養老孟司氏との対談集)で、ひっそりと挿絵に息子さんの名前が貼られていたこともあり、どんな人物だろうと思っていました。
 
息子を身ごもった際の出産への決意、出産後の思い切った人生の転換。
息子デルスの名は、黒沢明監督の映画の中で、シベリアで野生動物との共存を許された老人の名前からとったものだそうです。その名前の通りに、彼はどこの国にも所属しない、いわば地球人としか言いようがない生き方を、子供の頃から環境として与えられました。
あとがき部分に本人の文章があり、すでに成人した息子氏側からの記述も面白く読みました。国境のない世界観を身につけつつも、母親や家族への帰属意識もしっかりと根付いている。浮草でない、根を張った部分に感動しました。つまるところ母は、自ら良しとする行き方を子供に背中で示すしかないし、そうしかできないし、それを自ら選んだような選ばなかったようなものとして子は生きていくしかない。自らに引き付けてもそのように感じました。