悠々闊歩

はるかな道を悠々と、闊歩していきます

死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の五〇〇日(門田隆将)

年長のクライアントさんに勧められ、貸していただいた本。この方には映画『フクシマ・フィフティ』も勧められて観た。これはその原作にあたるらしい。
東日本大震災時に福島第一原発の所長だった吉田氏をはじめ、その周辺の90人を取材して書かれた記録。郷土愛や使命感に駆られて、現場の限られた条件のなかで、できることに決死の想いで取り組んだ様子が描かれている。
 
押さえた筆致ではあるけれど、東電本部や当時の政府がいかに、机上の空論や建前重視で動いたかが、対比されている。これは映画での描かれ方も同様だった。
 
ノンフィクションとは言え、やはり誰かの眼鏡を通して描かれたものだと、そこの前提はくずしてはいけないと思う。でも、現場の視座からはこう見えていたんだなあとわかる。一人一人に家族があり、背景があり、覚悟があって、人間の無力や偶発性に支配されるところなんかも改めて沁みた。