ちびくろ・さんぼ
我が家には「ちびくろ・さんぼ」のお話絵本があります。人権問題で自粛後の復刻版じゃなくて、昭和48年発行第23刷、定価220円。主人が子どもの頃に読んだものを、実家からゆずってもらったものです。
このごろ娘たちのお気に入りで、リクエストされることが多くなりました。
実に面白いです。娘が引き込まれるように、息をのんで次のページを待ちわびるように、私自身も楽しんで読めます。赤い上着に青いズボン、紫の靴をはいて緑の傘をさしたさんぼ。ばたになってしまう虎たち。我が家にあるのは岩波書店版ですが、2つ目のお話もたのしい。双子の弟たち、うーふとむーふを救うお話です。
でも不思議なことに、私の小さい頃の記憶には、この本がありません。お話は知っているのになぜだろう。図書館で借りたのかな。そう思いながら読んでいて、何度目かに思い当たりました。
小さい頃、家に「おはなしレコード」がありました。確か東京子どもクラブというところの発行でした。おもちゃのようなレコード・プレーヤーで、EP盤を45回転でまわして、よくお姉ちゃんたちと聞いていたっけ。
虎たちが木の回りをぐるぐる走り回るときの、「ぐるるるるる・・・」という声の調子を、思い出しました。
そして、少々悲しくなりました。
主人は小さい頃、ずいぶん母親に本を読んでもらっていたようです。年季の入った絵本や児童書が残っています。長じて成人した兄弟どうし、ページをめくる姿はほほえましいです。
それから家族のお祝い時に必ず作られる料理、ケーキ。ずらりと並んだ分厚いアルバム。
対して私は、母親に本を読んでもらったり、お弁当をつくってもらったり、そういう記憶が薄いのです。母親はずっと働きづめでしたし、事情もありました。
もちろん、だから私の家庭がだめで主人のがよかった、という短絡的な問題ではない。
それでも、私の中で、「いえの中で かまわれずにそだった」という意識は、
今でもときおり、鈍い痛みとなって現れます。
だからこそ、私自身の築く家庭は
できれば暖かくありたい。そう願っています。
気持ちにも時間にも余裕を持って、子どもと対峙していたい、と思うのです。
まあ、理想と自分のとり得る態度とのギャップに、日々苦しんでいるのですが・・・
子育てをしていると
自分の育ち方を振り返る機会が 多く与えられるように思います。
生きなおしてる、というか。
子どもと毎日を過ごすのはしんどくて 働きたい!と思うこともしばしばですが
こうして子どもとどたばた過ごす時間も 自分にとって必要なんだろうと思っています。(はは)